瀬戸内海 真鍋島の今

猫島、真鍋島の今
昔、2016年9月1日に訪れた猫の島を先日再訪しました。
今回、中学校の裏山から見下ろした真鍋島、本浦のスケッチです。校舎の屋根越しに本浦、そして青い瀬戸内海を挟んで笹岡諸島の島々が広がっていました。1本の高い椰子の木が何とも印象的!


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〇あれから3年半、今どうなっているのかな、と気になっていましたが2020年3月23日(土)にやっと再訪を果たしました。
笠岡港から普通船で1時間と少し、途中5つの島と1つの港、計6つの港を巡っていきます。旅行者は半分ぐらい、それぞれの島で結構乗り降りが有り生活航路であると感じました。


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真鍋島の本浦には12時半ごろ着きました。若い女性客がかなり乗っていたようです。船着き場の男性に聞くと皆猫目当てやろう、との事でした。


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実際、10匹くらいの猫に囲まれた2人づれの女性客を遠くに見ながら、港近くの食堂、“船出”を確認です。


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一般に過疎の島では数年たつと店をたたんでいる事が多いものですから、先ず気になりました。そこは前回昼食に天ぷら定食をいただき、更に午後の帰り際にはお酒を2杯頂いたところです。でも、暖簾が出ていません。或は、と心配しながらこれも先ほどの人に聞いてみました。“やっていますよ”との事でほっとしました。何故暖簾が出てないのかな?
後で知ったのですが、船着き場の男性とは、即ち“船出”の人だったんです。
今回の昼食は安全の為笠岡駅近くのスーパーで弁当を買い、船中で昼食を済ませたので取り敢えず“船出”に寄ることなく、そのままスケッチの場所を探しに防潮堤に沿って海側に回り込んでいきました。その後、戻る途中前を行く1匹の猫を目撃。声を掛けると振り返ったんです。
その時の 猫三態です。


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声を掛けると振り返りました。


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間近で目が合って。しばらく無言の会話。


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去っていくときは振り返って見送ってくれました。勝手に“しろくろ”と名付けた感じのいい猫らしい猫でした。
旅先での人との触れ合いは貴重ですが、今回は先ずは猫とのふれあいで始まったと言う事でしょうか。
中学校の校舎です。1949年に建てられた木造の立派な建屋、映画のロケにも使われたそうです。


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改修工事中でした。右手の坂を上がって奥に回り込むと教師と思われる一輪車で枯草を運んでいた若い男性に出会いました。
基本的な事を聞いてみました。


今、3年生を含めて4人の在校生、そのうち2人は卒業して、新しく一人が入学してくるとか。だから4月からは3人になる訳です。先生の数はと言うと4課(国語、数学等)で各1人、プラス校長先生など計8人いると言われてました。 “贅沢な環境ですね”と尋ねると笑いながら
“他ではできないことが一杯出来て結構楽しくやってます” との事。これ、自嘲気味では無く本心から言われている様に思いました。まるでパラダイスみたいな環境、僕自身一瞬そんな暗示にかかったような気がしたものです。
一番最初のスケッチに戻りますが、これはこの中学校の裏山中腹からの景色で、その先生に親切に案内してもらった場所です。途中、音楽室が有り、この学校自慢の部屋です、とおっしゃってました。窓から覗き込むと確かに広い立派な部屋で沢山の楽器が備えられていました。
スケッチで言うと右手、少し下がった所にあります。
内心、たった数人の生徒でどうやって演奏するのかな、とも思いましたが、聞くのは野暮と思いとどまった次第。
島の小学校はと言うと、もっと少なく生徒数、現在数人らしいです。


〇中学校を後にして、港に戻ります。食堂“船出”ですが、なんとさっきは無かった暖簾が出ているではありませんか。もしかして僕の為に出してくれたのかなと思い嬉しくなりました。船が出るまで1時間と少しあり。


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暖簾をくぐって、燗酒を注文。なみなみと注がれたコップ酒、あてには大きなワカメが鉢に山盛りで出てきました。“今朝主人が取って来たんですよ” と女将さん。なるほど、なるほどと感心。
色々と情報を仕入れます。この島の人口は前回同様200人ぐらい、昔と較べると随分と少なくなったようですが、別段気にしていない様子です。食堂は他に2,3カ所、民宿や旅館も3,4カ所あります。小さな島、又人口の割には多いですね。
2杯目のお酒をいただいて、ほろ酔い気分で店を出ました。
船の時間まで30分程、船着き場近くでは人や猫たちが集まり始めています。猫たちの中にはさっきの“しろくろ”もいます。でも今回は全くの無視です。さすがは猫、と言ったところでしょう。


〇港の風情は前回と全く変わらず。トイレも今様の車椅子対応になっている訳でもなく、船着き場の待合室も狭いまま。でもそれがこの島の魅力でしょう。不易流行、必要最小限の改善で元の形を保全している島、と言えるのではないでしょうか。若し急に港の待合室がガラス張りになったり、江戸時代に石積みで出来た波止がコンクリート製に変わったりしたら、島のアイデンティティはアッと言うまに失せてしまいそうです。

波止です。石を積み上げた丈の素朴な防潮堤、江戸時代のものと思われます。


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島の人たちも現状で満足とはいかないでしょうが、今のままの島と何とか上手く付き合っていく、そんな気構えのように思いました。
この島は笠岡市に属しています。島外から見れば、笠岡市笠岡諸島に対する離島行政がうまくいっているのかもしれません。そう言えば、岡山県ではこの笠岡市は最も住みやすい町の上位にランクされていると、駅のポスターに書いてありました。