旭洋丸進水式 内海造船 

瀬戸内海の新しいクルーズフェリー②
広島、呉、松山を結ぶ新しいクルーズフェリー”旭洋丸“の進水式が、瀬戸田内海造船で7月5日、12時20分から執り行われました。この船は前回、神田造船所で4月3日に進水した“シー パセオ“と同じ航路に9月就航予定です。


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スケッチは、進水後30分程後に艤装桟橋に係留された本船です。まだ満船飾がマストなどに残ったままになっています。進水式の帰り、三原行の高速船乗り場に近い所で運よく目にしました。

◎さて船名ですが前回と比べて全くつけ方が違いますね。船会社が違うためです。
“シー パセオ“は広島の瀬戸内海汽船、そして今回進水した”旭洋丸“は、松山の石崎汽船です。
スケッチのように“シー パセオ“と比較すると今回の船はオーソドックスな外観になっているようです。


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この画像は瀬戸内海汽船のホームページに出ている”シー パセオ”の完成予想図です。今回の船と比べてください。

今回の“旭洋丸”は現在就航中の同名の”旭洋丸”(1987年6月就航、696総トン)の後継船となるそうです。総トン数は875トンと200トン近く増えているので、客室は随分と広くなっているのでしょう。全長、幅はほぼ同じです。
この航路には4隻の船が就航しています。それぞれの船会社が2隻ずつ運航しています。のこり2隻も順次建造され何れ全てが新しいフェリーにリプレースされます。但し皆殆ど同じ全長、幅なのは港湾設備を共有しているからです。
今回の新造船に共通して言えるのは、インバウンドのお客さん対応が充実している事、そして災害発生時、臨時に旅客定員を100名増やせることです。昨年7月、もう一年になりますが、あの大災害の教訓を生かしていると言えるでしょう。
当時は、JR呉線が不通となり、復旧するまで、これらフェリーがピストン運転で呉と広島を往復しました。
◎今回進水した直後の画像です。


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左側に大きな船体が見えますが、これは同じ船台で2隻の船を並べて建造しているからです。ちなみにこの船台の大きさは長さ240メートル 幅57メートルあります。今回の旭洋丸は、長さ63メートル、幅13メートルですから随分と巨大な設備ですね。
内海造船所の画像です。正面の巨大船が先程紹介した同じ船台で建造中の船になります。

陸に上がった巨大なクジラのようです。


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◎クルーズ考
最後に、瀬戸内海のクルーズフェリー、及びカーフェリーについての現状を整理したいと思います。分け方としては、大型フェリーと中小型フェリーの2種類に分けられるでしょう。更にもう一つのタイプを追加しています。


1. 大型フェリー
阪神~九州航路を代表とするフェリー、航海時間は10時間前後でトラック主体です。夕方出港、翌朝入港なので、運転手不足解消、待遇改善などに貢献する為、昨今需要の伸びが大きく、どんどん大型化が進んでいます。
港湾設備も広大な敷地と設備が必要となるため、鉄道の駅からは随分と離れた不便な所に追いやられるケースが多いようです。
例外としては、神戸の三宮FT,大阪南港のコスモFT くらいでしょうか?
並行してホテル替わりとしての需要も旅行ツアーを含め、これもどんどん需要が増えています。
旅客用設備としては、あくまでも一泊の夜行便なので、レストラン、大浴場、個室、ロビーぐらいでしょうか。これら設備が今、どんどん大きく、又豪華になってきている訳です。大阪などのホテル事情にも起因しています。 即ち予約が取れないし料金が高止まりになっているからです。
僕も何度か北九州~大阪便を利用していますが、それなりに快適な一夜でした。ネット予約、シングルで 八千円以下で泊まれました。新門司港泉大津港の運賃込みですからね。
只、トラックがメインですから昼行便は、考えられないでしょう。瀬戸内海の移り変わる景色をのんびり見ながら、と言うクルーズの要素は殆ど無く、あくまでも一泊のホテルを兼ねてと言う需要となります。

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この画像は去年秋に乗船した阪急フェリー、つくしです。新門司港、夕方6時半出港、翌朝6時神戸港着の予定だったのですが、台風21号の余波で神戸は入港禁止となり、急遽泉大津港行に変更となったいわくつきの便です。

全長195メートル、幅26.5メートル。総トン数1万3千トン。
ここで注意が必要です。総トン数ですが、日本の場合車両甲板等(密閉されていない)は総トン数に含みません。若しそれを含めると倍くらいのトン数になります。例えば、この大型フェリーが海外に輸出されたら、途端に倍くらい、即ち2万6千総トン前後の船になってしまうわけです。日本での課税は総トン数で為されるため、船会社としては総トン数の小さい方が得なのです。

海外では普通、国際総トン数が使われていて、それは車両甲板の容積も含んでいます。


2. 中小型フェリー
島嶼部や本州四国を結ぶ昔ながらのフェリーです。総トン数は数百トン~数千トンで宿泊設備のない昼行便です。航海時間は数時間程度で瀬戸内海の島嶼部を中心に生活航路として活躍してきました。ところが昨今、世界的に瀬戸内海が注目を浴びるようになり急にインバウンド対応された新造船が増えてきたようです。何故かと言うと、瀬戸内海の魅力がそれらの航路に潜在していたからです。いつも利用している人には分からない世界、と言うのが面白いですね。海に限らず、です。何もない変哲な所が実は、云々、となる訳です。勿論、今回進水した船は中小型フェリーになり、今のトレンドを備えている筈です。
これらはクルーズフェリーと呼ばれるようになりました。
又、大型フェリーと異なり旅客にとって有難いのは乗り場の近くに鉄道の駅が有る場合が多い、と言うことです。これはインバウンドを含む利用者にとって非常にありがたいことです。大規模な駐車場や港湾設備が不要ですからね。
でも、あちこちの島を見ようとすると、大変です。点から点を結ぶ船が殆どなので、乗り継いで次の島に行くのは、ほぼ不可能でしょう。そこでもう一つのタイプの船が必要となります。


3. もう一つのタイプ
大型、中小型フェリーに出来ない事をする船が必要です。簡単に言えば旅客主体の宿泊型で、どこの港にも出入りできる1万総トン位のクルーズ船です。島から島、港から港へ時間はかかっても瀬戸内海巡りをやってくれる船。
現在、尾道港、常石港発着の がんつう と言うクルーズ船が有りますが、庶民的な船ではありませんし、少し小さすぎるようです。
又、単なる寝る丈のホテル替わりの船と言うのでは無く、プールなどを備えたリゾートホテルが各観光地に移動して勝手に導き巡ってくれる、そのようなイメージがもう一つのタイプになるでしょう。

おわり